高等学校第111回卒業式を開催しました
新型コロナウィルス感染症の拡大を防止するための緊急の要請を受け、臨時休校に入ることになりましたが、いくつかの充分に効果的な対策を取ったうえで、卒業式を開催しました。体育館での式典は行わず、放送での式辞、送辞、答辞となりました。
校長式辞は、文書で配布しました。放送で話した内容は、式辞の解説のような形となりました。
以下、放送原稿です。
おはようございます。

今日も寒い朝になりました。新型コロナウィルス感染症対策のために例年のような卒業式を開催することができなくなりました。新型コロナウィルスの感染は、大勢の人数で、互いに近い距離に接近した状態で、長時間にわたって集まっているような状態で拡大すると考えられています。ですからそのような状態を避けることが重要な対策となります。そのため、保護者や在校生の出席を求めず、体育館での式典を避けて各教室でクラス単位の卒業式として開催することとしました。前代未聞のことで、卒業生の皆さんにとっても送り出す私たち教職員にとっても、甚だ残念なことですが、広がりつつある感染の拡大を防ぐためには社会全体の協力が求められています。やがて感染症が山場を越し、蔓延することを防げたとき、思ったほどではなかったねと言えることを願っています。
直接校長から卒業生総代に卒業証書を手渡すことができませんが、ここに、特進コース代表野田咲来、文理コース代表川合案未、キャリアデザインコース代表亀垣直哉はじめ卒業生396名の卒業を認めます。
後ほど私に代わって各担任の先生から卒業証書を授与いたします。
第111回目の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
そして、この場にはお見えになりませんが、3年間にわたり本校の教育活動にご理解とご支援を賜りました保護者の皆様に、心からのお祝いと深い感謝の意を表します。
校長式辞は、文書で配布していますので、後で読んでください。市邨学園理事長からの祝辞も頂いていますので、拝読願います。
ここでは一言、申し添えます。
皆さんは、111年目の市邨という節目にふさわしい生徒たちでした。卒業をお祝いするとともに、市邨を支えてくれたことに感謝したいと思います。
高校を卒業するということは嬉しいことである反面、将来への不安感もあろうかと思います。未知なる世界、先の読めない不透明な社会です。そんな「答えの見えない社会で、自分自身の答えを見つける」ことができるよう、君たちの2030年の未来を切り拓いて生きていけるように、この3年間「自ら考え、自ら行動する力を養う」ことを教育目標としてきました。どんな社会でも正しく生きるための指針として君たちには「市邨精神」があります。人間の尊厳を基に、「一に人物、二に伎倆」として優れた人格を育成し、天稟を引き伸ばし、世界を我が市場とするグローバルな視野を保ち、何より「犠牲的精神」を発揮して「自ら楽しんで人のために尽くす」生き方を求めてください。わからなくなったらいつでも自ら学ぶことです。それが終身教育です。その生きる力が君たちの中には芽生えていると信じます。
結びに餞(はなむけ)の言葉を送ります。
「起てよ、憤りを発せよ。有用の人たれ。活舞台に於いて活躍する活人物たれ。世界は我が市場ならずや」
以下は、文書配布した校長式辞です。
今年の冬は冬らしい寒さにならないまま、いつまでも春がやってこないもどかしさがあります。3か年の高校生活を締めくくる卒業式をこのような特異な形で行わなければならないことは誠に残念ですが、何はともあれ名古屋経済大学市邨高等学校第111回卒業証書授与式を挙行できますことを喜びたいと思います。
卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
そして、この場にはお見えになりませんが、3年間にわたり本校の教育活動にご理解とご支援を賜りました保護者の皆様に、心からのお祝いと深い感謝の意を表します。
昨年末に現れ、ここに来て急激に猛威を振るい始めた新型コロナウィルス感染症の影響で例年とは異なる門出になりました。こののち時代が過ぎて卒業生の皆さんが「高校の卒業式はコロナウイルスで大変だったなあ」と、懐かしんで語れる未来が来ることを心より願っています。
皆さんが入学した時、学校パンフレットで「あなたの2030年が見えますか?」と呼びかけました。111回目の入学生となる皆さんに、「未来を切り拓く力を付けよう」と言いました。そして、市邨が推し進めている教育改革の、その柱は「Teachingより、Learningへ」、つまり、「他人に教わるより自ら考えろ」だと言ったのです。その改革の節目として制服を一新しました。皆さんが、新制服第1号という自負を持って着こなしてくれたので、色々なところで話題になり、評判になりました。市邨精神を体現するえんじ色の服に誇りを持てたのではないかと思います。皆さんに感謝したいと思います。
市邨の教育目標としてこの3年間「自ら考え、自ら行動する力を養う」という目標を掲げてきました。それは、「答えの見えない社会で、自分自身の答えを見つける」ことができるようになるためです。皆さんの高校時代はすでに混沌とした時代でした。3年前にトランプ大統領が誕生し、世界の不安定要因になっています。さらに、イギリスのEU離脱が混迷の末に決まり、不安が広がっています。中国との経済摩擦は、現在の新型コロナウイルスの蔓延によってさらに深刻化し、世界規模の不況が始まろうとしています。自然の驚異は、ウイルスだけではなく、地球温暖化による自然環境の破壊が確実に進行しています。このような中で令和の時代が始まり、あなた方が活躍するべき世界が目前に展開しているのです。
「君はどう生きるか」がまさに問われています。そして皆さんは、その答えを見つける指針を持っています。市邨での3年間の学びは確実に「未来を切り拓く力」を育ててきました。市邨精神が皆さんに根付いていると思います。
3年生になって建学の精神の講話をした時、「あなたは市邨高校で何を学びましたか?」という問いに、「私は『これからの人生をどう生きていくか』ということを学びました。これからの世の中は大きく変化をしていき、人々はそれに対応していかなければいけません。そういった時『人間の尊厳』のことであったり、『犠牲的精神』がとても重要になります。これからの自分の目の前にいったいどのような道が表れるのか、そして自分が何を選択するべきなのか、こういった事を深く考えるべきだと私は気づくことができました」と答えてくれました。
またその振り返りの中で「卒業して、世の中に出たときのことを今日は深く考えました。私は職業についた時、二つの大人に出会うだろうなと思いました。『仕事を心から楽しんでいる人』と『お金を稼ぐだけの人』。もし、本当に2人の大人に出会うのなら『仕事を心から楽しむ努力をしている人』についていきたいと思いました。仕事をする時間は人生で一番長いと私は思っています。なので、どう楽しむか、どう考えれば人生が豊かになるのか、今から深く考えていきたいと思いました」、別の人は「市邨芳樹先生の唱えた理念・精神は、一学校の建学の精神を越えて、社会でのあるべき現代的教育改革の指針を示すばかりでなく、人の生き方についても触れ、しっかりとした考え方を示しているということに驚きを覚えた」と書いてくれました。素晴らしい生徒たちだなと思います。私は、「見事に市邨精神が生きているじゃないか」、「市邨での学びがこんな素敵な若者を作ったんだ」と感激しました。
最後に、もう一度、市邨精神の一つの柱である、犠牲的精神について述べたいと思います。
かつて市邨芳樹先生は、「犠牲的精神を以て天職を尽くすと云うこと」がいかに大事かを卒業式のたびに生徒たちに話していました。「人生の進むべき道というのは、人の為に尽くすということにある、それがどうしようもなく仕方がないからするのでなく、自ら楽しんで人の為に尽くすことが肝心である」と。人の道は犠牲的精神にこそある、見返りを求めず、自ら楽しんで人の為に自分を投げ出そうではないかと呼びかけたのです。
君たちにどの様な未来が待っているのか、誰も予測はつきません。ほんの一月前でさえ、新型コロナウイルスのせいでこのような事態になるとは予測できませんでした。iPhoneが登場して12年になります。世界は大きく変わってしまいました。誰でも何処でもつながり、店に行かなくても品物が手に入り、バーチャルな世界とリアルな現実が境目を失い、もしかして近い未来にAIが人間に変わって未来を築く、そんな混沌とした世界。そんな未来を生きていくには、多くの人に学び、自分の頭で考え、自分で行動するしかありません。卒業したあとも生涯にわたって学び続けなさいという「終身教育」の教えを思い出してください。
餞(はなむけ)の言葉を送ります。
「起てよ、憤りを発せよ。有用の人たれ。活舞台に於いて活躍する活人物たれ。世界は我が市場ならずや」
令和二年三月五日
名古屋経済大学市邨高等学校長 澁谷有人